きっと初夏の風がゆるやかに頬を撫でるころ、ふたりは観覧車に揺られていた。恋人という関係を始めたばかりの男女は互いの知っているはずの部分が、少しずつ知らない顔を見せていく。
その時、胸の奥で何かが静かに溶けはじめる。
これは幼馴染ふたりが恋人になってから、恋と欲の境を越えていく小さな夜の物語。

マーブル幼馴染の静かな挑発
観覧車のてっぺんで交わされたキス。それは初めてなのに、彼女・来奈の表情はどこか余裕に満ちていた。
黒髪を耳の後ろで束ね、小ぶりなピアスを揺らす姿は、セーラー服という記号以上に女を纏っていた。彼氏のひなたは、その温度差にくすぶるような感情を抱き「自分から彼女をドキドキさせたい」と願うその一歩が、ふたりきりの部屋での小さなはじまりとなる。
はじまりは触れる勇気から
幼馴染という関係性は、ときに罪深い。
知っているはずの身体に新しい意味が宿る。シャツのボタンを外しながら目を逸らしたひなたの指先に、来奈は静かに微笑みを返しながら、自らの胸元を差し出す。
そこにあったのは彼が思い描いていたよりも豊かな身体、そしてほんの少しの誘うような女の呼吸だった。
初めての夜、彼女はあえてペースを崩さず、リードされたいふりをして彼を導く。
心と身体の間にある温度
この作品が美しいのは、性そのものを描くだけではなく、慣れたふりをする彼女と試される彼という静かな構図に身近な恋愛のきらめきを織り交ぜている点だ。
ふたりの夜は一度きりでは終わらず、気まずさも余韻も抱えたままもう一度抱き合う2回戦へ。
来奈が小さくつぶやく「もっとドキドキさせて」という言葉が、あまりにも等身大でけれど妖しくてまるで読者の耳にも届いてしまいそうなほど、リアルに濡れているのだ。
だからこちらも己の手で慰めるしかなかった。
胸の奥で湿り気を帯びる記憶
恋と欲が重なる瞬間には、誰しも子どもから大人への一歩を知る。この物語は、派手な展開や過激な描写ではなく身近な男女のなかにあるじわりとしたエロスを巧みに掬い取っている。
黒髪、清楚、巨乳、童貞。
そうした記号の数々は、本作ではすべて飾りではなく時間をかけて咲く花として描かれる。まさに、セーラー服の襟元に宿る残り香のような、やわらかく、けれど抗いがたい官能のかたちである。
マーブル作者名はHamao
作品名は「マーブル」、作者名はHamao先生です。
彼女が自ら選び、耳に宿らせた小さな輝きをいつしか彼の望みのためにそっと外す。
そんな矛盾した黒髪を揺らす清楚なセーラー服のJKを見ると、戸惑いの波間で揺れながらも秘めた想いに誘惑されて己の手で境界を越えて上下に動かす自分を知ってしまうのだった。