【露凝りて白色】居場所のなさが産んだ密やかな愛のかたち

ふたりは現実から外れた場所で、ただ自分たちだけに許されたリズムで、静かに呼吸を合わせていた

誰にも見られないこと。

けれど、もしかしたら誰かに見られてしまうかもしれないこと。その不確かな境界線がふたりの触れあいを熱く深くした。

健介は彼女を「紗花ちゃん」と名で呼んだ。それはまるで世界のなかにただ一人、彼女だけを呼び寄せる呪文のようだった。そして彼女は彼を「健介」と呼び捨てにしてやわらかく微笑んで応えた。

それは恋とは少し違う。欲望のままでもない。けれど互いの孤独を埋め合うように交わされる、純度の高い依存。

言葉にならない感情のやりとりが、指先や視線に込められていた。

教室という密室と、制服という境界

誰もいない放課後の教室。進学塾に通う女生徒が淫らに男の象徴を愛撫する。

机と椅子の並ぶその風景は、日中と変わらぬはずなのにふたりの存在がそれを異なる結界へと変えていた。

制服は社会と学校の枠に組み込まれた象徴だった。だが、いまその布地はふたりだけの儀式を包むための仮面のようにも見えた。

セーラー襟のずれた位置、少し乱れたリボン。それらは、愛撫よりも静かで記憶に残る乱れだった。

そして何より印象的だったのはひとつ行為が終わったあと、制服を脱ぎ捨てたあとにあらわれたふたりの生まれたままの沈黙だった。

無言のまま寄り添う、そしてこの世代特有の熱意だけで突き進むその姿に、教室の空気だけがそっと温度を変えてゆくようだった。

露凝りて白色の作者名は百済児廿日先生

作品名は「露凝りて白色」、作者名は百済児廿日先生。